確定反撃への対応についての考え方

ある程度慣れたプレイヤー同士の対戦では、不用意に駒を動かすと歩の打ち込みによる確定反撃を食らって取られてしまいます。
確定反撃を受けると駒損して不利になることが多いので、対応方法をちゃんと知っておくことがとても大事です。

基本図

 

先手側の5五銀と歩を取る手に対して後手側から5四歩の確定反撃が飛んでくる。クールタイム差でこの銀は取られてしまう。これを繰り返していると駒損で不利になりやすい。


確定反撃への対処方法はいくつかありますが
「確定反撃を受けても駒を取られた後取り返せるようにしておく(支えの歩)」
「確定反撃を受ける前に自分の駒を打ち込んで防ぐ(差し込み)」
「確定反撃を受けないようにあらかじめ自分の駒を打ち込んでおく(先打ち、裏打ち)」
「確定反撃を受けても他の駒で取れるようにしておく」

この4つに分類されるかと思います。

順に見てみましょう。

・支えの歩

基本図から5五銀、5六歩


自分の駒を動かした後、後ろに歩を打って支えます(盤面上にすでにある歩を突いて支えることもあります)。
これによって確定反撃を受けたとしても5五歩と銀を取られた後に更に同歩と取り返すことができるため、駒の損得で不利を起こしにくくなります。
確定反撃そのものを防ぐわけではありませんが、最も基本的で重要な対応です。
駒を動かしたら後ろに歩を打って支えるのは基本中の基本なので、まずはこれを覚えられるといいです。
操作は多少遅れても大丈夫で、最悪取られる寸前に打っても何とかなりますが、できれば手早く打てるとなお良いですね。

・差し込み

基本図から5五銀、(できるだけ素早く)5四歩


相手の確定反撃よりも先に自分の駒(主に歩)を打ち込んで確定反撃を防ぐテクニックです。
「相手の打ちたいところに打て」という格言をまさにリアルタイムで実行する手。
相手が確定反撃を狙っているところにこちらが先んじて打つためには素早い操作が必要になります。
「自分の駒を動かす→持ち駒パレットを開く→歩を選択する→カーソルを一つ前に動かして打つ」
この一連の操作を可能な限り素早く実行する必要があります。これは練習あるのみです。持ち駒パレットのカーソルが歩以外の位置になっていると素早く歩が打てないので、事前に歩にカーソルを合わせておくようにしましょう。
差し込みが間に合わずに確定反撃を受けてしまった場合は改めて支えの歩でカバーするとよいです。

差し込んだ歩が相手の角や桂馬に当たる場面だと確定反撃を防ぎつつ攻める攻防手となってより有効的になることが多いです。

攻防手となることで有効的になりやすい差し込み。こういう場面で5六歩の支えの歩ではやや消極的でもったいない。


操作速度が出せるなら支えの歩よりも有効に機能することも多いですが、差し込んだ歩が相手の駒に取られる位置の場合は悪手になってしまうこともあります。特に序盤の仕掛けの際などに一枚しかない歩を打ち込んで取られてしまうと歩切れになってよくないので気をつけましょう。

勢い5四歩と差し込んでいくが相手の銀に取られてしまう位置。ケースバイケースではあるものの、こういう場面では支えの歩の方が良いこともある。

 

・先打ち、裏打ち

基本図から先に5四歩。次に5五銀と安全に取りにいく。


自分の駒を動かす前に先に自分の駒を打ち込んで相手の確定反撃を事前に防ぐ手段です。
差し込みの場合は相手も確定反撃を狙ってくるので操作速度で負けてしまって打てないことがありますが、事前の打ち込みであれば相手からは防ぎにくいため実戦においてとても有効です。
ただし、差し込みを狙う場合よりも全体としての操作量が多く、時間がかかってしまうのが弱点です。
操作する必要のある駒が多い場面ではゆっくり裏打ちを狙っている余裕がないことも多く、操作量が少なくて済む差し込みや支えの歩を多用せざるを得ないことも多いです。
序盤など比較的盤面状況が落ち着いている場面で有効です。

 

・他の駒で取る
直接的な対応というよりは形でカバーする発想です。
例え確定反撃を受けてしまうような場面であっても、相手の打った確定反撃をこちらの駒で取れる形であれば相手としては確定反撃を打ちにくくなります。

5五銀に対して後手側が5四歩と確定反撃を打つと4六の桂馬で取られてしまう。

こちらは6五の銀でカバーする形。ただし後手側の持ち駒に歩が2枚以上あるならば5五銀、5四歩、同銀左に更に5三歩と確定反撃を合わせて無理やり崩していくような手も考えられる。


場面によっては相手の打った確定反撃をこちらがタダで取って終わるだけになるので、そうなると相手からは確定反撃が打てない形になります。つまりその場合こちらは支えの歩や差し込みといった他の防御手段を使わなくてもよいわけです。
支えの歩や差し込みはとても有効なので使い慣れてくると手癖でどんどん打ってしまいがちですが、打つ必要のない場面ではこれを控える動きもできるようになると歩をより有効な場面で使うことができようになるのでなお良いです。
ただし手持ちの歩が豊富な状況などであれば上記のような場面であっても支えの歩や差し込みをどんどん入れ込んでいく方がより手厚い指し回しとなることもあるため、ケースバイケースではあります。

以下は軽く実戦図です。

相手が6六角、6五歩の攻めを見せて角交換となった形。一時的に歩損している。

6六銀と取る。7七の桂馬が利いているので相手から6五歩確定反撃は打ちにくい。こちらもここで6五歩の差し込みは桂馬で取られる位置だし、6七と支える歩は形を決めてしまってやや損。したがってここでは何もせず貴重な一歩を温存するのが良い、と思われる。これで駒割は五分に戻った。

ついでなのでここからの仕掛けを考えてみる。6六銀のクールタイムが残り3秒になるまで待ってから7五歩、7六金。金を前に出すことで攻めを手厚くする。銀のクールタイムを待たずに同じ仕掛けをすると後手側の7五同歩が7六金への確定反撃になってしまって失敗。

後手側が7五同歩としてきたが銀のクールタイムを待った効果で取ることができる。このように確定反撃を防ぐために他の駒を利かせるためには駒の動ける範囲だけでなく時間面も考慮する必要がある。

先に7四歩、もしくは7五銀から7四歩と差し込んで調子良く攻めていく。ちなみにだがこの場合後手側の金銀が3段目まで上がるのが遅いせいでこの攻めを許してしまっている。


ということで今回は以上です。
リアルタイムバトル将棋の中盤戦は互いに確定反撃を決めつつ相手からの確定反撃を阻止していく、その流れの中で少しずつポイントを稼いで優勢を築いていくのが基本になっています。
実際には歩だけはなく香車や桂馬を使った確定反撃、開き王手の要領で角を使った確定反撃の阻止といった要素もあってなかなか難解ですが、本記事で紹介したようなテクニック、考え方を覚えておけば基本的な中盤戦のやり取りができるようになってくるかと思います。是非意識してみてください。