リアルタイムバトル将棋 手筋・テクニック集

リアルタイムバトル将棋でよく使われる手筋、テクニック集です。
名称は解説用に筆者が適当に付けたものが多いです、ご了承ください。

歩の確定反撃

クールタイム差によって相手の大駒を確定で取る、プレイヤーが真っ先に覚えるべき超基本手筋です。
基本的なことになりますが、リアルタイムバトル将棋では駒ごとに、一度動かした後次に動かせるようになるまでの時間、クールタイムというものが存在します。

クールタイムは駒によって異なり、

・王、歩…3秒
香車、桂馬…4秒
・金、銀、成金、飛車、角、竜、馬…6秒

となっています(駒が成った直後は成る前と同じクールタイム)。

飛車や角などの大駒は一度動くと、6秒間動くことができません。
そこで、飛車、角などの駒が動いた後に、その頭に持ち駒の歩を打つと、大駒よりも歩の方が先に動けるので、確定で取れるというわけです。

図1

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相手が5五歩の交換から角を繰り出してきた場面。
動かした直後なのでクールタイムが発生し、この角は6秒待たないと動かせない。そこで…

 図2f:id:makotodash2:20220226222753p:plain

角の目の前、5六に持ち駒の歩を打ち込んだ。
歩のクールタイムは3秒なので、角が動けるようになる前に打ち込んだこちらの歩の方が先に動いて、相手の角を取ってしまえる。これが確定反撃。
このような不用意な大駒の飛び出しに対しては、歩で確実に反撃したい。
相手の角の残りクールタイムが3.1秒以上であれば成立するが、打ち込みが遅れて際どいタイミングになってしまうと取るか逃げるかのタイミング勝負になってしまう。

図3f:id:makotodash2:20220226222825p:plain

 こちらは相手が8六歩の交換から8六飛と繰り出してきた場面。
本将棋では飛車先の歩を交換するのは定番の指し方だが、こちらも次に8七歩打ちの確定反撃でこちらの飛車得が確定。
序盤での相手の不用意な攻めに対してはこのように確実に対処したい。

 慣れるまでは持ち駒操作がやや難しいので、CPUを相手に練習するとよいです。
CPUは序盤から積極的に大駒を動かしてくる傾向があるので、練習相手としては最適です。
この手筋がしっかり扱えるようになってくると、本気のCPU相手にも勝てるようになってきます。
もちろん対人戦でも大活躍の手筋。

ちなみに歩が手持ちにない状況などでは、少し猶予は短くなりますが代用としてクールタイム4秒の香車と桂馬でも確定反撃を決めることができます。

なお、確定反撃とは元々は格闘ゲーム用語。
相手の隙のある攻撃をガードした後に、発生の速い技で反撃することを指します。
確反、もしくは反撃確定の略で反確と略されることが多いですね。

 

先打ち

先ほど紹介した確定反撃への対処法となる手筋。

図1

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2四歩、同歩とした場面。
ここで2四飛車とすると、2三歩の確定反撃を受けてしまうのは先ほど学んだ通り。
しかし…。

図2f:id:makotodash2:20220226142704p:plain

2四飛車と走り、相手の2三歩打ちよりも先に、2四で取った歩を2三に打ち込む(!)
このように「蓋をする」ことで確定反撃は受けない。
2手以上まとめて指すことができる、リアルタイムバトル将棋ならではの手筋である。
確定反撃を防ぐのが目的なので、手持ちの駒がある状況では歩以外の駒の打ち込みでも構わない。

本将棋の格言「敵の打ちたいところに打て」を地でいく手筋。
リアルタイムバトル将棋では「敵の打ちたいところに敵よりも先に打て」が格言となります。

こちらも実戦で使っていくにはある程度操作力が必要です。
相手も確定反撃を狙ってくるので、同程度の力量のプレイヤー同士の場合、早い者勝ち勝負になってしまい、単純に正面から挑んでも毎回勝つのは難しいです。
他の場所で何らかのアクションを起こすなど、陽動を行ったうえで挑むと、成立しやすいです。
攻め以外の場面でも、クールタイムの長い駒を動かした場合には、確定反撃を防ぐために駒の前に歩で蓋をする動きが重要になってきます。


また、持ち駒がある場合は、先に駒を打ち込んでおくことでも、確定反撃を防ぐことができます。

図3f:id:makotodash2:20220226142107p:plain

次に2五飛車として2四に歩を打ち、確定反撃を防ぐのが狙い。
ただ、この場合は持ち駒に歩があるので、リスクのある操作力勝負を挑む必要はない。

図4f:id:makotodash2:20220226142143p:plain

先に2四歩と打つ。これで確定反撃を受ける心配はないので、安全に2五飛車と指せる。
こういう風に相手の歩の裏側に歩を打っていく手は、本将棋でも有力な指し方。

確定反撃を防ぐだけでなく、相手が受け駒を打ちたいところにこちらが先に打っていくことで、相手の受けを封じることもできます。

図5f:id:makotodash2:20220226142218p:plain

2六の銀が2五の桂馬を取れる状況。
相手が桂馬を受けるために2四歩と打ってくることが予想される。

図6f:id:makotodash2:20220226142903p:plain

相手よりも先に2四に歩を打つことで、相手は2五の桂馬を受けることができなくなった。
これで2五銀と安全に桂馬を取れる。もちろん確定反撃も受けない。

相手の受けを防ぎつつ、確定反撃を防ぐことができるため、相手の駒を取りに行く時には重要な手筋です。
特に王を使って相手の駒を取りに行く時、相手の受けの歩打ちと噛み合ってしまうと即敗北に繋がることがあるため、この手筋で防いでいきたいです。

図7f:id:makotodash2:20220226142940p:plain

後手が7五銀と繰り出してきた場面。
素直に同玉と応じると、相手が7四歩とコンマ数秒先に打った場合に、先に動かれて王を取られてしまう。
このような状況で不用意に王を動かすと、即負けに繋がってしまうこともあるので気をつけよう。
この場面でも先にこちらから7四歩と打てば問題なく銀を取れる。

 

誘いの歩

本将棋の「叩きの歩」とかなり性質が近い手。
相手の駒に動きを強制させて、歩の確定反撃を狙っていく。

図1

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相手の飛車先が通り、このままでは8九に成りこまれてしまうという場面。
素直に受ける手もあるが、ここでは手持ちの2枚の歩を使って仕掛けていく。

図2

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8三歩と「叩く」。こういう手は本将棋でもよく出てくる。
飛車の位置をずらしてこちらの駒の利きに入らせたり、飛車の横への利きを外す手筋である。
リアルタイムバトル将棋ではそれに加えて、もう一つの効果がある。

図3

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8三同飛と応じたことで、飛車が6秒のクールタイムに突入した。
そこにすかさず8四歩と打ち、クールタイム3秒の確定反撃を食らわせる。
これで飛車取りが確定した。

相手としては打たれた歩をうかつに取ることができないため、かなり有力な牽制手段となります。
もちろん相手が動かなければそのまま歩で相手の駒を取れますし、横に逃げたなら前方への動きを阻止できたことになります。

例では直接飛車に当てて8三歩と打ちましたが、前方への利きを遮断するだけなら、8四や8五といった離れた位置の打ち込みでもかまいません。
その場合も同飛車と応じてきた場合には歩で確定反撃が狙えます。

有力な手筋ではありますが、歩を一枚相手に献上することになるため、歩が貴重なこのゲームでは狙える場面はやや限られてきます。
金や銀相手にも実行できますが、使いどころはよく考えたいところ。
相手にやられた場合は、確定反撃封じの先打ちが主な対抗手段となります(8三同飛+8四歩打ち)。

 

支えの歩

駒を動かした後、後ろから即座に歩を突く、もしくは歩を打ち込んで前の駒を支えていく手筋。
実戦で頻発する手筋です。
2手セットで動かす、リアルタイムバトル将棋ならではの手筋で、前で動かした駒が取られても歩で取り返すことができます。
これを使って積極的に駒を前に繰り出すのが基本的な攻めの形です。

序盤では仕掛けの際に一方的に歩得の状況を作りやすく、中盤以降でも相手側からは対処しにくい攻め筋となります。

図1

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先手が右四間飛車の形を組んでいる。
まだ序盤の駒組みの段階のようだが、早くも仕掛けのチャンスがある。

図2

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4四角と歩を取り、4五歩と突き支える。
本将棋では不可能な、この2手セットの仕掛けが非常に鋭い。

図3

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4四同角と取られたが、クールタイム差で4四歩と取り返せる。
結果、角交換になったが、先に4四角と歩を取ったおかげで、先手が歩得の状況。
更に、次に歩を成り込むこともできるため、早くも先手が有利な態勢といえる。

オンライン対戦初期の頃に猛威を振るった戦法「うみねこ刺し」もこの手筋を使っています。

図4

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うみねこ刺しの基本的な形。2五桂馬と跳ねて、次に1三への成り込みを狙う。

図5

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1三桂成りに1四歩と突き支える。
相手の歩を取った上でこちらの歩を突ける、というのが大きい。

相手から取り返される位置に駒を動かしたら、とりあえず後ろから歩で支える、ということを意識できるとよいです。
支えることによって自分の駒が取られてもその後で相手の駒を取り返すことができるので、一方的に駒を取られていくということがなくなります。

相手の確定反撃が飛んでくるのが見えている場面でも先に支えておく手が有効です。
ただしその場合は、駒の前に蓋をして確定反撃を防ぐ手段もあるため、状況に応じて使い分けられればベストです。

 

垂れ歩ループ

支えの歩を連続して繰り出すことで、と金を次々に生み出す強力な手筋。「と金ラッシュ」とも。

成り込んだ駒が取られたら支えた歩が成り込み、更にその後ろに次の歩を打ち込むことで、その名の通りループします。
先ほどのうみねこ刺しの局面の続きから見てみましょう。

図1

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1三桂成に同香と応じた後手。
先手はそこに1四の歩を1三歩成りとして、即座に1四歩打ちと支えて打つ。
後手が桂馬か角で1三のと金を取り返すと、後ろの歩がまた1三歩成りと成り込んでくる。

図の状況では手持ちの歩が一枚だけですが、2枚以上ある場合は、この流れが歩のある限り延々と続いてしまいます。
まともに相手をしていると相手の陣地はあっという間に焦土化してしまう、強力な手筋です。
やられた場合はできるだけ相手をせずに駒を遠ざけたり、歩を使って受けたりして、被害を出さないようにしたいです。
使う方としては、やや形が重くなる点に注意。

なお、本将棋における垂れ歩とはこういった手です。

図2

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2四歩と「垂らす」
次の2三歩成りを見せている。

図3

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8四歩と垂らす。
玉頭に攻めの拠点を作った。

他にも相手陣地内でと金を作る手などがあります。
こういった垂れ歩はリアルタイムバトル将棋でも有効な手になることが多いので、覚えておきましょう。

 

空き王手

本将棋でも存在する手筋ですが、リアルタイムバトル将棋においては奇襲的な意味合いが強くなります。
大駒の動きを遮断している駒を動かし、即座に大駒を動かして王をかすめ取る手で、把握できていないとあっという間に王が取られてしまいます。

図1

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互いに駒組がある程度完了した状況。
しかし相手玉がこちらの角のラインに入っている。

図2

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6五歩と突き、早くも角で王が取れる状況になった。
相手が気づかなければこれで王を取って即試合終了である。
ただし、相手の駒の割り込みによる操作キャンセルなども起こるため、決めるのは案外難しい。

指されてから対応するのは難しいので、大駒の筋に王が入らないようにするのが基本です。
相手の大駒、特に角の位置については常に把握できるようにしておきたいです。
単に遠距離から角、飛車で王手をかけるのも気づかれにくく強いのですが、クールタイム6秒に加えて、王手の効果音が鳴ることで反応されやすいです。
空き王手の場合は間接的な王手になるため王手の効果音が鳴らないという点も強力です。

 

利かせ駒遮断

遠くから利かせてある駒(飛車や角など)の動きを遮断する手を打ち、安全に利き駒を取る手筋。
本将棋では詰みの場面であっても、リアルタイムバトル将棋では駒の利きを遮断する手を使うことで安全に玉を逃がせることも多いです。

図1

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相手が8九金と王手をかけてきた場面。
本将棋であればこれで詰みである(9八玉、9九金、8八玉、8九飛車成りまで)。
しかしリアルタイムバトル将棋ではむしろ受け側のチャンスとなる場面。

図2

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7九金と引くことで、相手の飛車の利きを遮断した。
これで王手だったはずの金がタダ駒と化してしまう。
この後はもちろん8九玉と、金を取る。
盤面の駒の移動だけでなく、5九歩打ちなどと持ち駒を打ち込んで遮断する手もある。

図3

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8八金と打たれた場面。
これも本将棋なら即詰みの場面。

図4

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8七歩と飛車の利きを遮断すれば次に8八玉で金のタダ取りである。
打つのは8五など8筋の他の位置でも構わない。

 

利かせ駒抜き

利かせ駒遮断と似た守りの手筋。
利かせ駒に対してこちらの駒の利きが当たっている場合、先にそちらを取ってしまえば、利きがなくなった駒はタダになります。

図1

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相手が6七金と打ち込んできた場面。
なかなか厳しい王手のように見えるが…。

図2

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6六銀と、先に利かせてある歩の方を取ってしまえば、利きがなくなった6七の金はタダである。

上手く決めれば相手の攻め駒をまとめて取ることができるため、形勢に大きく影響してくる重要な手筋です。
相手が迂闊な攻めを見せた場合はまとめて駒を取ってしまうチャンスでもあるので、相手の駒の利きに惑わされずに落ち着いて対処できると良いです。
逆に攻める側の場合、利かせている駒が相手の駒に取られる状況では攻めは成立しない、という意識を持つ必要があります。

操作が早ければ手順が前後(先に6七玉と金を取ってから6六銀)しても間に合うこともありますが、リスキーです。
クールタイム差などで操作が間に合いそうにない場合以外では、利かせている駒を先に抜くのが基本です。

この手筋の応用として、クールタイム差を活かして、利かせ駒を抜く手を放っていくのも有効です。

図3

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7八金と打たれた場面。
持ち駒が歩だけなので金に対する龍の利きを遮断する手が打てず、龍を取ることもできないため、万事休すかに思われるが…。

図4

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5九歩と、龍を取る手を打っていく。
相手の金はまだクールタイムが5秒あるため、こちらが打ち込んだ歩で先に龍を取ってしまえば、その後王で金を取ることができる。
龍で歩を取れば金の利きが消えて王で金が取れる。
また、龍がどこかに移動すれば、クールタイム6秒が発生するので、これもまた王で金が取れる。
このように利かせてある駒の方にアクションを起こすことで、利きを無効化して凌げる場合があります。
 

切り返し

主に相手の駒の成り込みからの歩での支えに対してカウンターとなる手筋。
相手が支えてくる場所に先にこちらの歩(もしくは他の駒)を打ち込んで支えを封じ、支えられなくなった駒をこちらの駒で取る。

図1

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相手が5七へ香車の成り込みを見せている。
このまま成り込まれて5六歩と支えられてしまうと、同玉と取れず中央が突破されてかなり苦しくなってしまう。

図2

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5七香成を見て、相手の5六歩より先にこちらが5六に歩を打つことができた。
これで5七の香車を王で取ることができるので、こちらの危険はなくなった。

切り返しに成功できるかどうかで状況が大きく変わることもあるため、かなり重要な守りの手筋です。
相手の手を読んだうえで、歩を持った状態で打ちたい場所に先にカーソルを合わせておくと成功しやすくなります。
逆に攻める側からすると、相手が切り返しを狙っていそうなら迂闊に仕掛けない、といった判断が必要になってきます。

 

捨て身受け

主に追い詰められた場面で、あえて相手の駒の利いている場所に王を動かし、相手が反応して王を取ってくる前に、王を取ろうとしている駒を他の駒で取って凌ぐ手筋。
クールタイムのやり取りと反応速度の関係で成立する、リアルタイムバトル将棋の対人戦ならではの手筋です。

図1

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相手の怒涛の攻めで完全に包囲されて詰みの状態。
相手の駒のクールタイムも終わって、すぐにでも王を取ってこられる状況。王以外を動かす余裕はない。
基本的には負けだが、まだ唯一助かる筋が残されている。

図2

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3六玉と歩を取る(!)
金が利いている歩を王が取るという、本将棋では絶対にあり得ない手であり、リアルタイムバトル将棋においても相手が反応して3六金と王を取ってくれば即敗北になる手だが…

図3

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相手が反応して金を動かす前に3五銀と金を取って凌いだ。

詰みの場面であってもこのようになんとかなってしまうことがあるのがリアルタイムバトル将棋の不思議なところ。
何故これが成立するかというと、仕留めに行く側は相手が何をしてくるかを見てからそれに反応して手を指さなくてはいけません。
しかし凌ぐ側は一連の動きを想定して連続して動かすことができるので、相手が反応する前に速度で上回り、このように凌げる可能性が出てくるのです。

図1の場面で、状況に余裕があれば先に銀で金を取っておくべきところですが、今回のように追い詰められた場面ではその操作をしている間に他の駒で王を取られて負けてしまう可能性が高いです。
そのため、あえて手順を前後させることで相手の意表を突いて一瞬だけ王の安全度を上げて凌ぐ、このような手段が有効になる場合があります。
相手が人間だからこそ成立する、実戦的なやり取りであると言えるでしょう。

意図的な手順前後で相手の意表を突く手段は、人読みが絡んでくるものの受け以外でも様々な場面で応用が効く上級者向けのテクニックといえます。

 

顔面受け

王の近くに大駒を打たれた場合、王自ら取りに行く手筋。
やることは歩の場合と同じで、クールタイム3秒の身軽さを活かして相手の大駒に確定反撃を決めていきます。
ただし、操作が間に合わなかった場合などには即敗北に繋がるリスクがあるので、クールタイムや周辺の駒の状況はしっかり把握したうえで行いましょう。

図1

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後手が5九飛車と飛車の打ち込みで王手を放ってきた場面。
5八金などと普通に受ける手もあるが、余裕があれば飛車を取るチャンスである。

図2

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5八玉と引いて、王自ら果敢に飛車を取りに行く。
慣れないとちょっと怖い手だが、王のクールタイムは歩と同じ3秒なので、うかつに寄ってきた駒はこのように餌食になってしまう。
これで飛車取りが確定のように見えるが、油断は禁物。

図3

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後手が4七桂馬と、飛車に紐を付ける手を放ってきた。
クールタイムに注目。ここで王で飛車を取ってしまうと、次の3秒の間に桂馬で取られてしまう。
歩と違って王の場合はこういう手を指された場合に取りに行けないので要注意。
 

ヒットアンドアウェイ

王のクールタイムの速さを活かして、一旦前に出て相手の駒を取ってから、王が取られる前に下がって駒得するテクニック。
いわゆる「獅子王」の動きと称されることもあります。

図1

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相手が3四銀+3五歩と3筋の位を取る手を指してきた。

図2

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銀のクールタイムは6秒。すぐには動けないので、顔面受けと同じ要領でこの3五の歩は王で取ることができる。

図3

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銀が動くよりも前に、クールタイム3秒の王はもう一度動くことができる。
1歩取った状態で下がることができた。

この手筋も相手の駒の利きやクールタイムをしっかり見る必要があるので慣れるまでは難しいです。
柔軟に王を動かすことで相手の甘い動きからポイントを奪うことができるので、慣れてきたら意識してみましょう。
一時的に王が危険な状態になることには変わりないので、過信は禁物です。

 

避け歩

確定反撃ができない位置に相手の駒がきた場合に、こちらの駒を動かしてスペースを作ってから歩を打って確定反撃を決めていく手筋。
主に機動力のある王の移動から決めていくことが多く、王周辺でのやり取りで優位を築くために重要な手筋です。

図1

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相手が桂馬で紐付けて6六金と王手でプレッシャーをかけてきた場面。
同玉とは取れず、下手な対応をしていると不利になってしまう。

図2

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6八王と逃げてから6七歩と打って確定反撃を決める。
これで金を取ってしまえば相手の攻めは薄くなりそうだ。

慣れてきたら金の利きに入る5七などへの逃げからの6七歩確定反撃でもよいです。
金のクールタイムが終わる前にこちらが打った歩で金を取れるので、時間差で相手の金の利きのない場所になると見なせます。
ただし…

図3

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王を動かしてからの6七歩打ちを読んでいた相手は、歩を打たれる前に6七にカーソルを合わせて先に香車を打ち込んで確定反撃を防ぎ、攻めを継続させた。

避けてからの確定反撃は有力ゆえに読まれやすく、このような形で防がれてしまうこともあると覚えておきましょう。

 

見切り回避

リアルタイムバトル将棋はその名の通り、互いにリアルタイムで操作を実行するため、コンマ数秒のやり取りで操作が噛み合わないということが往々にして起こる。
そこで、相手の操作を予測し、そのコンマ数秒前にこちらの操作を行って、相手の操作を空振りさせるというテクニック。
タイミングが噛み合うかどうかはかなりシビアなので、確実に狙って決められるというものではなく、ダメ元でやってみたら成功するかも、くらいの使われ方になることが多い。
しかしながらカーソル位置などの情報から相手の操作をしっかり予測できれば、実戦においても窮地から脱する手段になり得る。

図1

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いわゆる頭金という詰みの状況。
今度こそどうしようもないように見えるが…。

図2

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後手が3九金と王を取る手を指す、そのコンマ数秒前に2八玉と操作して回避できた。
間抜けなやり取りに見えるかもしれないが、実戦で実際にこういうことはよく起こる。

これはむしろ駒を取りに行く側が気をつけるべき問題です。
勝利確定のような場面で、こうなってしまう可能性があることは頭に入れておきましょう。
ある程度読み合い要素も入ってきますが、一番確実なのはこのような回避が起こり得ない、相手の駒のクールタイム中に取りに行くことです。

 

すかし取り

見切り回避の一種。
相手の駒にこちらの駒が取られる直前に回避することで、こちらの駒を取りそこなった相手の駒を一方的に取るテクニック。
主に大駒の飛車角相手に実行する。

図1

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序盤の状況。互いの角道が通っているため、どちらかが角を取りに行って角交換になる展開が予想される。
先手側が7七角と構えているのがポイント。

図2

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相手から7七角成りと角を取りに来たが、その一瞬手前で8八角と引いて回避した。
これでこちらが一方的に角を取ることができるので、序盤から大きなリードを奪うことができた。

相手のカーソルを見ながら決めるテクニックで、特に序盤の角交換の際に使われることが多いです。
決まると一気に形成が傾くこともあるため、駒を取りに行く側はタイミングをずらすなどして警戒する必要があります。

 

刹那寄せ

互いの王が近い位置にいる時、互いの王が接触するいわゆる「刹那」の状態を、クールタイム的に有利な状況で発生させることを狙うテクニック。

図1

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全体的に駒損が激しく不利な状況。

図2

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5五飛車とあえてタダで飛車を差し出した。
相手も他の操作をしていると即座には反応できない。そこで…

図3

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相手が飛車を取ってくるのを読んで、それよりも一瞬早く4六王と寄せる。
互いの王が接触する「刹那」の状態になったが、相手を読んで先に動かしたこちらの方が一瞬早く王を動かすことができるため、先に相手の王を取って逆転勝利できる。

いわゆる「刹那」の状態は、王同士が近い時に突発的に発生することがあり、そうなった場合はどちらが先に自分の王で相手の王を取るか、というタイミング勝負になります。
危険ではあるものの、一気に勝負がひっくり返る可能性があるため、不利な状況においては相手の手を読んで積極的に狙っていく価値があると言えます。
逆に有利な側は相手のこのような行動に気をつけて、慎重に王を動かす必要があります。

 

ディレイ操作

リアルタイムバトル将棋は基本的に早く操作した方がいいと思われがちですが、待ち(ディレイ)をかけた方がよい場面もあります。
クールタイムが絡む場面が典型的。

図1

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後手玉を激しく攻め立てている場面。
3四の桂馬を4二に成り込んでいくことができるが…。

図2

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慌ててすぐに成り込んだ場合。
4三の成り銀のクールタイムがまだ残り5秒なので、この4二の成り桂はヒットアンドアウェイの動きができる王で取られてしまう。

図3

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4三の成り銀のクールタイムが残り3秒になるまで待ってから4二桂成りとした場合。
この場合は4二同玉とできない。

このように、こちらの駒を早く動かしてしまうと、動かした駒に対して相手側の操作が早く実行できてしまうため、待った方がいい場合があります。
こういった場面では、駒を取る、取らないである程度操作の読み合いも絡んできます。

 

ディレイ封鎖

ディレイ操作の応用。
あえて相手の王に退路を用意しておき、相手がそこに逃げる直前に封鎖して、取れる状態にしてしまう。
人読みが関わってくるテクニック。

図1

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相手の王が積極的に前に出てきて、王手がかかり少し窮屈になっている状況(銀のクールタイムは残り6秒)。
唯一の逃げ場である6四に逃がさないように、6五歩と突く手が見える。

図2

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6五歩と退路を封鎖した。
これで部分的には詰みの状況だが、少し追い詰めた程度では簡単には寄らないのがリアルタイムバトル将棋の王。

図3

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相手は7三銀と引いて王の退路を作り、8四玉と逃げて凌いだ。
早期に退路を封鎖すると、圧迫された相手は別のルートで退路を作ることを考える。

図4

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最初の場面に戻って、こちらが6五の歩を突いていなければ相手の王は6四に逃げるだろう、という読みで相手が6四玉を指す直前ギリギリのタイミングで6五歩を指す。
読みが当たった場合、クールタイム3秒同士でこちらの歩の方が一瞬先に動いて王を取れるため、これで勝ちが確定する。

かなり読みが関わってきますが、成功すれば一気に勝ちに持っていけるため強力なテクニック。
相手の指し筋や心理を読んだ上で成立するテクニックといえます。

 

ディレイ歩

ディレイをかけて支えの歩を指すことで、相手の同玉を誘い、刹那差で王を取れるようにするテクニック。
ディレイ封鎖と同様、上手く決めることができると一気に勝ちに持っていくことができます。


図1

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激しい中盤戦の場面。
3三金(もしくは2三金)+3四歩(2四歩)と支える手が見える。

図2

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中央付近での駒のやり取りをこなしつつ、3三金と指した。
3四歩の支えが見えているので、相手は同玉と取ってはいけない場面だが、ここで3四歩と指すのを遅らせるのがポイント。

図3

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3四歩を遅らせたことで、支えがないと踏んだ相手は隙のできる3三同角ではなく3三同玉の操作を実行。
3三同玉を読んでこちらが一瞬先に3四歩を突いていたので王を取って勝負を決めることができる。

RTB将棋の対戦にある程度慣れたプレイヤー同士の場合、支えが利く状況では警戒して迂闊に同玉とはしませんが、ディレイをかけることによって同玉を誘える場合があります。
相手の心理の隙を突く実戦的な手段で、普通に支える場面と使い分けできると良いです。